井上収氏 株式会社藤和ハウス チーフデザイナー
藤和ハウスの設計部門を率いる側ら、セレシスではチーフデザイナーを兼務。年間1200件以上の戸建てプランを提案した経歴を持つ、まさに間取りづくりのプロフェッショナル。常にベストなプランを創造する『プランクリエイター』として活躍中。
東西道路のプランづくり
前回は北道路・南道路を「日当たりの面」からお話をさせて頂きました。今回は敷地が東西道路に面している場合の建物の配置について考えていきたいと思います。
例えば、図1のような場合、道路に沿って敷地が南北に長い場合は北側に玄関と水周りを配置することで、南側に日当たりの良い居室を取りやすくなります。しかし、このような恵まれた条件の土地ばかりではなく、道路に対しての間口が短い、図2、図3のような土地も多く存在します。
図2、図3のように車庫のスペースを取ると建物は、東西に長細くなり庭先を確保するのが難しい場合があります。そこで図3のように変形させるとどうでしょうか? T型の一方に駐車スペースを取り、もう一方に庭を取ることができます。また、ここに窓を設けることによって採光も風通しも良くなります。図2のように中途半端に庭先を空けるよりも、空間として豊かな住まい方が出来るかも知れませんね。
また、この2つのプラン形状には、違う角度からみた場合においても、おもしろい差が出てきます。
例えば、図4-1、図4-2はそれぞれ図2を『A-A´』、 図3を『B-B´』で切った際の断面図ですが、図4-2の方が屋根裏の有効活用として、小屋裏収納(ロフト等)も作りやすくなっています。つまり東西の道路に対する間口は、図3の方が長く取れているということになりますので、その分小屋裏収納の面積が広く取れるという訳です。
しかし、変形したプラン形状は必ずともメリットばかりとは限りません。シンプルな箱形のプラン形状に比べると、当然コストも上がってしまう可能性があるでしょう。そうした場合は、車庫を道路と平行にとってみてはいかがでしょうか。でも、最低7mぐらいの間口は確保することが出来ないと、車庫の出し入れに苦労をすることになりますので、ご注意下さい。
北側斜線に気をつけましょう。
東京都内で設計をしていると、地価が高いため狭小地や間口の狭い敷地を設計することもしばしばあります。都内の場合は北側斜線(高度地区制限)が厳しく、第一種高度地区(主に第一種低層住居専用地域等)は、図Aのような高さ制限を受けてしまいます。
北側斜線の影響でよくあるのが、図Bのような母屋下がりです。建物が北側に対して垂直な場合、一般的な配置で、北側境界より1m前後建物を離した場合でも、2階の天井部分に一部下がってくる部分が出てきます。
更に、北側の方向が北西などに振れている敷地の計画の場合は、図Cのように母屋下がりをする方向が、北側と西側の2箇所も出てくることになります。微妙な方位の傾きによって、建物の屋根や天井は大きな影響を受けてしまうことに注意して下さい。
また東京都における高度地区は3種類あり、基本的には用途地域によって変わってきます。ただし、こちらにも落とし穴はあります。 容積率が高い(多い)ので、より広い建物が建てられると思ってしまいがちですが、高度地区制限が厳しい地域もあるのです。敷地の容積率が200%もあるにも関わらず、実際には3階はほとんど取れなかったという話を耳にすることもありますので、お気を付け下さい。
もし、検討土地や建替えに興味があり、どの程度の建物が建てられそうかというご質問がございましたら、セレシスアドバイザーまでご連絡をしてみてはいかがでしょうか?